意外に多い、顎関節症予備軍

大きめに口を開こうとすると痛みが生じる、もしくはカクカクと音がなる、といった症状をお持ちの方はいらっしゃらないでしょうか?この症状は、程度の差こそあれ、割りと多く感じられる方がいらっしゃるようですので、今回のブログ記事では、これらの症状について書きたいと思います。

実は、口を開けた時の痛みはなくとも、顎を開閉するときに、カクカクという音を感じている人は、意外に多くいらっしゃいます。あるデータでは、約20%の方が、この音を実感しているという結果もありますので、さほど珍しい事では無いようです。

顔には、様々な関節と筋肉があります。口を開くための顎関節と顎を動かす筋肉がスムーズに動くことで、私たちはお口を開閉出来るわけですが、これらに何らかの問題が生じると、様々な症状が出てくる訳です。そして最も予測される疾患として、『顎関節症』が考えられます。

しかし、顎の音がするだけでは治療の必要がありませんが、それよりも深刻な症状が出ている方は、できるだけ早めに診断・治療をして貰う必要があります。
それでは、これら、顎関節症に関する症状と治療について、2回に分けて説明していきたいと思います。

顎関節症の診断について

まず最初に、顎関節症の診断についてご説明していきます。
顎関節症の診断で、最も重要なのは、お口を大きく開けた時の痛みの有無です。口を大きく開けた時に痛みがあるか無いかで、診断が変わってきます。

痛みが起こっているのは顎の筋肉部分です。顎の開閉時におこる顎の筋肉の痛みがあり、他の疾患が疑われなければ『顎関節症』と診断されることが多いと思います。
さて、『顎関節症』の診断は歯科医院にて行なえますので、顎の痛みを感じた場合は、お近くの歯科医院にご相談いただければと思います。

まずは、『顎関節症』の診断をする場合には、細かな問診が必要となります。いつ頃から痛みが始まり、どれくらい続いているのか、どんな時に痛みが強くなるのかなどをお聞きすることが大切です。
人によって痛みの感じ方や発生のタイミングが変わりますので、問診はとても重要になります。

その後、必要があればレントゲン撮影やCTスキャン撮影なども行います。状況に応じて諸検査が必要になります。

顎のカクカク音の原因

それでは、なぜお口の開閉時にカクカクという音がするのかについてご説明します。これは、顎の関節内になるクッション(関節円板)部分が前にズレてしまう事によって起こる事が多いようです。このズレが大きくなればなるほど、顎関節症の症状は強くなり、ひどい場合には、痛みでお口を開けられなくなります。
本来であれば、クッションである関節円板は下顎頭の外側と内側にしっかりと付着しています。しかし、前後方向の付着はゆるいので、強く大きな力が長い間、顎関節に加割り続けると、クッションである関節円板はにズレが生じることがあるわけです。

これらにより痛みが発生してしまいます。特に、頬とコメカミの痛みには、注意が必要です。

顎関節症の原因について

次に、顎関節症の原因についてまとめていきたいと思います。
実は、顎関節症の原因とされるものは、明確に定める事が難しいと言うことがいえます。噛合せ(咬合)の悪さが関係しているということも言われますが、必ずしもそればかりでは無いと思われています。

元々、顎関節や顎の筋肉が弱い方にも見られたりし、それに噛み合わせの悪さも重なり、複合的な原因が考えられます。

さらに、もう一つ現代特有の原因も考えられています。精神的に不安定な状態が続いたり、緊張している状態および強いストレスがかかった時にも、顎に強い力がかかる場合もあるようです。それらが、顎関節と筋肉に負担をかけてしまい、顎関節症を誘発してしまう場合もあります。
最近では、ついつい上下の歯を噛み締めてしまう、食いしばりや夜間の歯ぎしり等も問題になっています。食いしばりが強い人にも顎関節症になりやすいとも言えますので注意が必要です。食いしばりや夜間の歯ぎしりが強い方は、こちらの癖を治す事も大切になってきます。

忙しい現代人だからこそ、増えている病気であるという事も言えますね。
その他にも、食事時の癖として片側だけで噛んでしまう癖のある人、スポーツをしている人、重いものを運ぶお仕事についている人にも多く見られるとも言われています。
総じて言えば、歯を強く噛みしめ、負担をかけてしまう場合に起こりやすいという事ができます。

顎関節症のチェック

それでは、最後に顎関節症のセルフチェックについてご紹介したいと思います。
『日本顎関節症学会』では、下記のような顎関節症セルフチェックを公開しています。もしも、顎関節症が心配な方は、ご参考までに、ご自身の顎関節症の状態は、どの程度であるかをチェックしてみてください。

参考:http://kokuhoken.net/jstmj/general/about.shtml

<顎関節症自己チェック法>

(合計点数 8.6以上⇒顎関節症の危険あり)

(1)口を大きく開いたとき、人差し指から薬指を並べた3本指を縦にして入るか。

1.すっと入る
2.ほぼ問題ない
3.どちらともいえない
4.やや困難
5.全く入らない

(2)口を大きく開け閉めした時、あごの痛みがあるか。

1.全くない
2.たまにある
3.どちらともいえない
4.しばしばある
5.いつもある

(3)口を大きく開いたとき、まっすぐに開くか。

1.いつもまっすぐ
2.たまに曲がる
3.どちらともいえない
4.しばしば曲がる
5.いつも曲がる

(4)干し肉、するめ、タコなど硬いものを食べるとあごや顔が痛むか。


1.痛まない
2.たまに痛む
3.どちらともいえない
4.しばしば痛む
5.いつも痛む

いかがでしたでしょうか?
これらのセルフチェックを行い、点数が8.6以上になる方は、できるだけ早めに歯科医院にご相談いただければと思います。特に、顎の開閉時に痛みを感じる方は、できるだけ早めにご来院ください。

日々忙しく、様々な強いストレスにさらされる現代人は、ついつい身体に力が入ってしまいます。それらが、知らず知らずの内に肩や顎に力が入ってしまい、いつのまにか負担をかけてしまっていることがあります。
ストレスと顎の関節や筋肉が関係するとは、あまりイメージできないかもしれませんが、上記で述べたように、非常に密接な関係があります。

あまり軽んじることなく、異常を感じた場合には、速やかに専門医に相談することをおすすめいたします。

顎関節症の治療はリスクの低いものから

それでは、次に顎関節症の治療について書いていきたいと思います。

顎関節症の治療は、顎関節症の症状があり、噛み合わせが悪かったりお口の中に問題があるからといって、いきなり歯を削ったり矯正治療をしたりすることを治療の第一選択とはいたしません。

できるだけ患者さんにとってデメリットの少ない方法を選択することが大原則となります。

なぜなら、ひとたび、歯を削ってしまったりすると、削られた歯は二度と取り返せません。顎関節症が疑われるからといって、安易に歯を削ったりすることは避けなければならないのです。

それでは、顎関節症の治療にはどのような方法があるのでしょうか?さまざまな治療法は考えられますが、ここでは歯科医院における顎関節症治療に絞って説明していきたいと思います。どうぞ、ご参考ください。

マウスピースによる治療

歯科医院にて顎関節症と診断された場合には、主にスプリント(マウスピース)での治療が選択されます。これは、上顎もしくは下顎の歯に被せるプラスチック製の装置です。

スプリント(マウスピース)を装着するのは、主に夜間です。
睡眠中は無意識下で歯の食いしばりのような歯ぎしりを行っています。無意識下ですので、その癖をやめることはできません。よって、このスプリント(マウスピース)をはめることで、歯への負担を軽減することが可能になります。

このスプリント(マウスピース)による顎関節症の治療は、かなり効果がみられる方法です。このマウスピースで改善が見られた場合には、治療が上手くいっているという事が言えます。

このスプリント(マウスピース)は、歯科医院にて処方されますので、必ず歯科医院を受診して、専用のマウスピースを作ってもらって下さい。

その他、レーザー治療などを行う場合もありますが、患者さんの状況にあわせて治療を検討していく必要があります。

セルフケアによる顎関節症の改善法

本ブログ記事の冒頭で、できるだけリスクの少ない方法で顎関節症を治療することが第一選択になると書きました。
しかし、スプリント(マウスピース)等でも改善しない場合もありますので、そういう場合には、最悪の場合、外科的治療が必要になる場合もあります。

しかし、できるだけその手前で改善したいので、できればセルフケアに努めていただくことを併行してお勧めしたいと思います。

前のブログでも書きましたが、顎関節症の原因となるのは、歯への強く大きな力が継続的に加わる事です。寝ている間の食いしばりや歯ぎしりは身体の緊張やストレスも関係していると言われます。

精神的な不安やストレスでも生じやすくなります。できるだけメンタル面の調整も心がけて下さい。うつぶせ寝や睡眠不足も顎関節症の原因になりやすいので、睡眠のコントロールは非常に大切です。

また、お口の開閉時の痛みが強い場合には、ご自身で工夫出来ることもありますので下記をご参考ください。

まずは、お口の開閉時に強い痛みがある場合には、無理に大きな口を空けるのは避けましょう。痛みのある部分を冷やしたり、軽くマッサージをして筋肉をほぐすことも効果がある場合があります。急性期の場合は、炎症を抑えて安静にすることが大切です。

併せて、硬くて噛む力を必要とする食品は避け、さらに、大きな口を開けずに食べられるような工夫をすることも効果的です。フランスパンやビーフジャーキーのように、非常に硬い食べ物は顎に負担をかけてしまいます。

また、しばらくして急性期が過ぎて、痛みが少し和らぎ、口が開けられるようになったら、温かいタオルなどで温湿布をすることもよいかもしれません。今度は、筋肉を緩めるようにしてあげてください。

ただし、ご自身がどのような状況であるかが分からない場合には、必ずお近くの歯科医院にご相談ください。間違った対応で悪化させないよう、早めに専門家の指示を仰ぐことをお勧めします。

下記に、セルフケアのポイントをまとめておきますのでご参考ください。

<セルフケアポイント>

(1) 急性期(痛みが強く口が開かない時)は、柔らかい食べ物を食べるようにしましょう。(おかゆ、うどんなど)
(2) 急性期(痛みが強く口が開かない時)は硬いものは避けましょう。(ガム、フランスパンなど)
(3) 顔の筋肉をリラックスさせ、軽く上下の唇を触れさせ、歯を接触させないようにしましょう。食いしばり防止。逆に、口を開けすぎるのも顎に負担をかけますので注意して下さい。
(4) 大きなあくび、長時間の歯科治療は避けましょう。
(5) うつぶせ寝はやめ、低い枕を使い、顎に負担をかけないようにしましょう。
(6) 同じ姿勢を長く続ける事を避けましょう。そして、時々身体を動かしましょう。
(7) 猫背、顎を突き出すような姿勢をとらないようにしましょう。デスクワークやパソコン作業を長時間する方は、特に気をつけて下さい。
(8) 首の牽引、頬杖をしないようにしましょう。

顎関節症は自然に治る場合も

これまで、顎関節症について2回にわたりご説明してまいりました。
本ブログをお読みいただければわかったかと思いますが、あくまでも顎関節症とは、セルフケアで改善しやすい病気です。

日頃の生活を、少し注意するだけで改善していくことも多々あります。自然に治る場合もある疾患であることを覚えておいて下さい。しかし、なかなか治らない、痛みが我慢できない程になると、やはり専門家の診断および治療が必要です。我慢せずに歯科医院にご相談ください。

最後に、顎関節症を軽減するためのお顔のマッサージをご紹介しておきます。夜、お風呂に入った後など、ゆったりした気持ちでマッサージをする癖をつけておいていただければ良いと思います。全身がリラックスしますのでオススメです。

<マッサージ法>

(1) 肩のマッサージ:首の後ろから前に向かって肩をマッサージしてください。少し力を入れてマッサージしましょう。
(2) こめかみマッサージ:指でこめかみに円を描くようにクルクルとマッサージをしてください。少し力を入れて下さい。
(3) 頬と顎のマッサージ:頬と顎の関節部分に、円を描くようにクルクルマッサージしてください。少し力をいれてください。

顎関節症にお悩みの方、もしくは顎関節症かも?とご心配な方は、いしかわ歯科にお気軽にご相談ください。